SPECIAL

原作者・堀越耕平×アーティスト・米津玄師 
スペシャル対談

TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』の第1クールオープニングを飾る『ピースサイン』のCD発売(6月21日)を記念して、原作者の堀越耕平とアーティスト・米津玄師のスペシャル対談が実現した。
以前から米津玄師のファンだったという堀越先生と、"ヒロアカ"の読者であり、さらにマンガ家を目指していた過去もあると話す米津の初対面は、同年代のクリエイター同士、お互いへのリスペクトに溢れ、さまざまな質問が飛んだ。


ヒーロー盤ジャケット

「ピースサイン」米津玄師
2017年6月21日(水)CD発売

■ピース盤(初回限定):SRCL-9454~9456
¥1,900+税(CD+DVD+ピースリング)
■ヒーロー盤(初回限定):SRCL-9457
¥1,500+税(CD+赤ジュエルケース+ヒロアカTCGカード)
■通常盤:SRCL-9458 ¥1,200+税



堀越

『ピースサイン』のCDをいただいてから、ずっと聴いています。ありがとうございます。めちゃめちゃかっこいいです!


米津

ありがとうございます。僕もいつもマンガを読ませてもらっているので、オープニングテーマを作らせてもらって光栄でした!せっかくの機会なので、『僕のヒーローアカデミア』はどういう風に生まれたのかお聞きしたいんですが。


堀越

以前僕の連載がすぐ終わってしまった時すごく落ち込んだんですが、早く次の作品のアイデアを出さないといけなかったんです。考えている中で、以前『僕のヒーロー』という読切作品を描いていた時がすごく楽しかったから、「じゃあ描いていて楽しいものだけを描こう」と思って、それを元にした連載にしようと描き始めたのが『僕のヒーローアカデミア』でした。その中で、主人公のデクが頑張る姿を描きたいと考えていました。


米津

展開が早くて、すごくテンポがいい印象ですが、意識してのことなんですか?


堀越

飽きられないように、とは考えていた気がします。テンポよくというよりは、毎週新しい情報を入れるという意識でしたね。米津さんは、『ヒーローアカデミア』で好きなキャラクターはいるんですか?


米津

みんな魅力的だけど、個人的に好きなのは常闇と耳郎です。2人ともキャラクターデザインがすごく好みで、常闇は能力もかっこいいなと。堀越さんは好きなキャラクターとか、自分に似てるなって思うキャラクターは誰なんですか?


堀越

あまり意識をしたことはないですね。似てるということだと、強いて言うとデクじゃないかな。すぐに泣いたりオドオドしたり。あまり気持ちのいい部分ではないですけど(笑)、その辺りが似てるなって思います。



TVアニメ主題歌『ピースサイン』



堀越

『ピースサイン』は、まず何から決めて作りはじめたんですか? 今回に限らず、どういったとっかかりから曲を作りはじめるのか、すごく興味があります。


米津

まず最初に浮かんだのははじめの4行の歌詞です。「いつか僕らの上をスレスレに/通り過ぎていったあの飛行機を/不思議なくらいに憶えてる/意味もないのになぜか」という部分。これは僕の実体験に基づいた歌詞ですが、『ヒーローアカデミア』と自分との共通点を探しているときにふと思い出したんです。制作日数や作り方は曲によっても違いますが、『ピースサイン』は難しかったですね。難しかったというか、「果たしてこの曲は『ヒーローアカデミア』に相応しいものにできているか」と考える時間が長かったです。


堀越

米津さんが描いたCDジャケットのデクもかっこいいなって。


米津

『ピースサイン』を作っているときに、「ピースサインを掲げている少年の後ろ姿」がイメージにあって、そのイメージが「さらば掲げろピースサイン/転がっていくストーリーを」という歌詞になり、その後ろ姿をデクに置き換えたらこういう形になりました。


堀越

アニメのオープニングを見たときは、正直ポカンとしました。『ピースサイン』の音源を先にいただいて、いちファンとして何度も聴いていたので。自分の作ったキャラクターが米津さんの歌のなかで動くのを見て、改めてすごいことになったなと。何かこう、妄想が現実に現れた瞬間というか、それに近い感覚があったんですよね。


米津

『ピースサイン』は、『僕のヒーローアカデミア』のお陰で作ることができた曲です。オープニング映像を見た瞬間に、この日のために生まれてきた曲だったんだと確信したし、自分の言うのもなんですが、すごくいい曲です!



話はお互いの創作活動への興味へと移っていく――。



堀越

米津さんのイラストがとても好きで、『かいじゅうずかん』(米津が発売したイラスト集)も買ったんですよ。僕も昔はよく自分なりの「かいじゅう」を描いていたので、勝手ながら親近感を抱いてました(笑)。


米津

堀越さんのマンガにも所謂「かいじゅう」のようなものがたくさん出てきますよね。そのどれもデザインがかっこ良くて、ちょっとニッチなデザインが毎回ツボをついてくるので、敬服しております。


堀越

影響を受けたイラストレーターや作家さんはいるんですか?


米津

一番は岸本斉史さんですね。『NARUTO-ナルト-』には多大な影響を受けました。ほかには、青年になってから好きになった松本大洋さんや五十嵐大介さん。誰に影響を受けたかを聞かれると、真っ先に思い浮かぶのはマンガ家さんの名前ばっかり。堀越さんは、『ONE PIECE』や『NARUTO-ナルト-』に影響を受けたと聞いたんですが、それぞれの今一番好きなシーンが知りたいです。


堀越

好きなシーンが多くて、1つに絞るのは難しい(苦笑)。「今」ということなので、今パッと出たシーンを挙げると、『ONE PIECE』はフランキーの回想で、師であるトムさんが捕まってしまった際に、大人しくしておくべきところをフランキーが「俺は無理だわ」と言い暴れるところ。『NARUTO-ナルト-』は、再不斬の部下の鬼兄弟の襲撃で、カカシ先生がバラバラになってしまったところです。驚きと絶望と緊張感がガーッと押し寄せてきて一気に引き込まれました。


米津

僕も好きなのでよくわかります(笑)。あと僕、堀越さんの自画像が手のモンスターなことが気になってるんですけど。


堀越

特に深い意味はないです。単純に「手」を描くのが好きだから。本当にただ好きっていうだけで(笑)。米津さんは音楽も絵もやられていて、最初は両方とも趣味ではじめたと思うんですが、生業としたことで心境の変化はありましたか?


米津

子どものころは勉強や宿題とは違い、どこまでいってもひたすら楽しいものが音楽だったはずなのに、仕事にしたらいつの間にか勉強や宿題になってしまって。ふと我に返ったときに、こんなはずでは…と思ったりもします。でもやっぱり音楽は楽しいし、毎日頭に浮かんでくるのは音楽のことばかり。「自分は音楽のために生まれてきた!」みたいな思い上がり甚だしいことも考えたりするし、「こんな面倒なこともう止めてやる!」って全部諦めそうになったりも。続けていくのは難しいことだけど、だからこそ面白いとも感じますね。


堀越

プレッシャーって感じます?


米津

うーん、どうだろう? 僕はいつでも「自分に許せるものを作れているだろうか」と、問いかけながら音楽を作っているので、その許容範囲を越えられなかったらどうしよう?と不安になることはありますね。だけど、そういう内側からのプレッシャーはありますけど、外側からのプレッシャーを感じることはあまりないですね。求められなくなったら終わりというのは、むしろ自分にとっては分かりやすくて有難いし。ある種の救いとして機能してます。子どものころはマンガ家になりたくて、愚にもつかないマンガを描いていた時期もあったんですが、週刊マンガ家は休みがほとんどなく、睡眠もままならいほど大変だと聞いたのを今でも覚えていて。堀越さんはどんな環境、ペースでマンガを描いているんですか?


堀越

基本的には仕事場に籠りっぱなしです。最近は話作りにかなり時間を取られていて、作画のほうの締切り前は毎回徹夜ですね(笑)。でも、そこ以外は少しでも睡眠時間を取るようにしています。あまり気分転換ができないのが悩みなんですよ。寝るのは好きなんですが、起きてもすぐに昨日抱えていた不安や緊張が押し寄せてくるので、転換にはなってない感じで。でも、最近は日の光を浴びるようにはしています。米津さんはストイックなイメージがありますけど、気分転換はどうしてますか?


米津

僕はお酒を飲むのが好きなので、頭が煮えそうになったら誰かとお酒を飲みにいきますね。それくらいしかないです(苦笑)。それと堀越さんは音楽は好きですか?


堀越

音楽は好きです。もう生活の一部ですね。例えば、上京したてのころは、打ち合わせのために電車で(集英社のある)神保町へ向かっている間、チャットモンチーの『染まるよ』や『恋の煙』をよく聴いてたので、今でもその曲を聴くと、当時の電車の込み具合や当時抱えていた焦燥感を思い出したり。


米津

なるほど~。


堀越

米津さんの曲も大好きです。『ゴーゴー幽霊船』(米津の1stアルバム『diorama』収録)がとくに好きで、気分を乗せるためによく聴かせてもらってました。今は『ピースサイン』ですけど(笑)。自身の曲で思い入れのある1曲って何ですか?


米津

自分が作ってきた曲はどれも思い入れがあるし、その瞬間によっても違う気がするので、これ!と1つ挙げるのは難しいですね。ベタですけど、いつだってその時に作ってる最中の曲が一番好きです。でも、『ゴーゴー幽霊船』は、いまだにライブでもよく演奏する自分でも気に入ってる曲なので、聴いてもらえてたなんて嬉しいです!



最後に、2人のヒーローは、お互いにエールを交換し合った。



米津

デクたちの姿を見ると自然と背筋が伸びます。この子らはこんなにひたむきなのに、自分はどうだ?と。堀越さんの描くストーリーに毎度勇気をもらっています。どうかこれからもお互い良いものを作っていきましょう。


堀越

1人のファンとして、これまでの楽曲はもちろん、これから生み出されていくであろう楽曲も聴き続けます。米津さんの世界が本当に大好きです。もう、本当に只のファンなので…ひたすらついていくだけです。応援してます!



米津玄師のクロスワード・ピースクロス実施中。
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